2015年以前の賃貸住宅建築は非常に法規制の厳しい商品となっておりました。その一つが、敷地・建物の離隔距離です。
こちらでは、賃貸住宅の建物性能を上げることで敷地の有効活用を進めた法改正の事例を一つお伝え致します。
賃貸住宅の耐火建築物推進の動き
改正建築基準法による賃貸住宅の耐火建築物推進は、入居者の安全性や建物の耐久性向上を目的としています。この改正は、火災による被害を最小限に抑えるため、特殊建築物としての賃貸住宅にも耐火性能の要件を設けることで、適切な防火対策を行うことを求めています。
賃貸住宅の耐火建築物化に伴い、主要構造部の耐火性能が明確に求められるようになりました。これにより、建物の耐火性能を評価し、避難経路の確保や火災拡大の防止を図ることが可能となりました。さらに、外壁の開口部に遮炎性能を持つ設備を備えることで、火災の際に屋内への延焼を防ぐことができます。
特に注目すべきは、耐火性能だけでなく、避難経路に関する改正です。通路の確保においては、バルコニーから道路への通路だけでなく、非常用侵入口の設置や居室開口部側に通路を確保することが求められます。これにより、火災発生時の迅速かつ安全な避難を実現し、入居者の命を守ることができます。
また、建物の周囲に通路を設けることも重要な変更点です。特に火災時には避難経路の確保が困難となる可能性があるため、居室開口部側に3メートル以上の通路を設けることが求められます。これにより、適切な避難経路を確保し、入居者の避難安全を高めることができます。
改正建築基準法による賃貸住宅の耐火建築物推進は、入居者の生命と財産を守るために重要な取り組みです。建物の耐火性能や避難経路の確保は、火災発生時における避難のしやすさや速さに直結し、被害の拡大を最小限に抑えることができます。
積極的な耐火建築物推進によって、賃貸住宅の火災リスクを軽減し、入居者が安心して暮らせる環境を提供することが求められます。建築業界や不動産業者、賃貸住宅の所有者は、改正建築基準法に基づく適切な耐火性能の確保に取り組むことで、入居者の安全を守り、信頼を築くことが重要です。
賃貸住宅の耐火建築物推進は、建築基準法の改正により実現された重要な取り組みであり、入居者の安全と快適な居住環境の確保を目指すものと言えます。
法改正により広がる賃貸住宅提案の幅
通常賃貸オーナーの敷地が、必ずしも整形地ではないので、従来通りの2階建てであればプランニングが可能であっても、3階建となると制約の掛かっていた土地に対して、当改正によって土地活用設計の幅が広がり、建築会社においても提案できる商品の幅が広がることになりました。
限りある土地資産を最大限有効に活用する提案が望まれるケースは少なくなく、近年3階建て以上の中高層建築物の販売好調の背景には、こうした法改正も少なからず影響を与えているでしょう。