21年度の賃貸住宅の着工戸数は33万戸程度と、コロナ過の中では少し復調しましたが、ほんの5年前、2016年と比べると10万戸以上少ない戸数となりました。
そんな、着工戸数の減っている中、どんな賃貸住宅を考え建てるべきか、各社のトレンドを掴むことで、失敗しない賃貸住宅の検討に役立てて頂けると思います。
賃貸住宅市場の動き
まず、建築着工統計の推移や、賃貸住宅系のデベロッパーや大手ハウスメーカーの供給予測及び現状の受注状況等を加味した推計をしたとしても、コロナ過も相まって賃貸住宅着工の将来予測に関しては見通すことが困難な状況が続いています。
しかも、人口減少の流れは止まることなく、空家の増加が続く中で、首都圏や都市部においても賃貸の稼働率が停滞している物件が多くなっています。
ただ、2022年では、新たな変異株の感染拡大が深刻化している状況でも、金融機関の融資姿勢や動き始めた社会経済の中で、賃貸住宅の建設が徐々に動き出してきました。
しかし、消費増税などの契機や、今スグ動かなくてはならないほどのインパクトがある状況でもないので、あくまでもこれまで通り資産活用が必要な方々を中心にした最適な提案を進めていくことは変わらない様です。
ただその中でも、今後供給が進んでいく事が予想されるZEH化された賃貸物件の供給や、ZEH基準を満たしていなくても、基本仕様の高さが相まって、物件競争力がより求められます。
既存賃貸に関して言えば、賃貸リフォームを施しても市場とのミスマッチを避けることのできない物件は多くなっいるということです。
賃貸住宅を進める各社共に、市場のニーズを満たしたリフォーム提案、建替えも念頭に置いた競争力の高い賃貸物件の開発が求められています
賃貸住宅トレンド
・都市型の戦略商品
・ホテルライクや持家ではなく賃貸住宅だからできる暮らしの提案
・付加価値の強さを強調
都市型商品
在宅ワークが定着し、都心部から郊外へ住み替える層も一定数顕在化しましたが、一方で都心部の入居率が低迷しているということはありません、都市部は依然として人気は高いのです。
要するに、入居率が見込めるエリアは【都市部や中心部に多い】状況は継続
◆都市型の戦略を進める事業者はシェアを拡大
◆郊外でも高級路線の物件開発による高所得層の入居者開拓
上記は、今後も加速することが予想されます。
暮らしの提案
これまでの賃貸住宅の潮流は、高級感、ゆとり、中高層物件といったマンション系の物件開発が充実する方向に進んでいましたが、近年これがより鮮明なものとなっています。
・ホテルライクを謳う賃貸住宅の供給
・戸建仕様・分譲マンション仕様
➡➡高所得層の賃貸入居ニーズの掘り起こしが進んでいます。
・単身者向けでも1LDKの間取りの提案
・少し広めの居室空間
・個別の収納スペースの確保
・趣味に対応したガレージスペース
・ベランダやバルコニーを通した外の空間と室内の空間を一体化させた空間創りの演出
➡➡住宅設備機器の充実といった“モノ”の戦略は過渡期を迎えて、生活空間での付加価値を与える“コト”の充実を進める戦略が具現化され、結果として家賃単価の上昇にもつながっています。
IoTを活用した賃貸住宅の提案も今後はますます進化することになります。ゆとりと同様に各社がすでに標準仕様の取り組みとして展開しており、生活利便性を向上させる設備として一般化してる流れになりました。

実家暮らしの時点でこうした設備が住宅に備えられていることが当たり前の世代にとって、賃貸生活でも“あって当然”の設備になっていくことから、従来からの賃貸住宅だからできる“おためし居住”によって先進的な設備を試すことから、入居者自身の標準的な暮らし方への対応として変わってきています。
土地の有効活用策、資産活用策の一つとして賃貸住宅経営が選択されていますが、所有者も単に賃貸住宅経営を行うだけでなく、地域に貢献するという意思を持って賃貸住宅を建築することで、事業者と所有者の双方にとって新しい価値を生み出していくことが求められるようになっています。
付加価値の強さ
環境問題への取組みが全世界的に進む中、依然として限定された範囲での供給となっていますが、今後10年先を見通すと積水ハウスを筆頭にZEH仕様の賃貸住宅の供給割合が増加していくことがわかります。
賃貸住宅経営の側面からは、投資事業だけに収支的な課題があることは間違いないのですが、投資に見合う賃料設定が行われることで、競争力の高い賃貸物件としての付加価値は間違いなく高まっていくものと考えられます。
〇 | 目指すべき将来像が明確な賃貸住宅 |
× | ただ建てるだけの賃貸住宅 |
同じ賃貸住宅であったとしても、目指すべき将来像が明確な賃貸住宅とただ建てるだけの賃貸住宅では、長い賃貸住宅経営の中で将来的な入居率に大きな差異が生じることになるため、世の中の方向性の変化とともに、賃貸住宅も進化していかなくてはなりません。
オーナーと共に考えること
いかにして入居者に選ばれる賃貸住宅を建築するか、
・どのようなプランニング
・どのような長期展望を持って賃貸住宅経営を行っていくか
所有者であり経営者であるオーナーと共に、その土地に必要で、地域に貢献できる賃貸住宅を供給していかなければならないとうことです。
◆上質な暮らしが想像できる賃貸住宅の商品開発
◆入居希望者が多いエリアでの新規・建替による新築物件の供給
賃貸住宅のネガティブな市場性
賃貸住宅のネガティブな要因としては、
・投資用不動産への不正融資問題
・シェアハウスに関する問題
・賃貸住宅のハードに関する問題
などがこれまでのトピックスでありました。
ただ、近年ではこうした諸問題が報道されることも少なくなってきて、市場に影響を与えるような要因はあまり多くないように見受けられます。
賃貸住宅経営の安定性はこれからもオーナー層から求められますので、根本の部分で堅実な賃貸経営の提案、良質な賃貸住宅の供給を続けていくことで、賃貸住宅に対するネガティブな要因を生まないことが各社の義務になります。
【まとめ】これからの賃貸住宅に求められること
こうした背景を踏まえ、2022年度以降も改めて底堅い賃貸住宅の需要が見直されています。
そして、賃料価格帯も上昇に転じるエリアが出てきており、コロナ禍での新しい生活様式の定着して、賃貸住宅の住まい方も大きく動いているように感じます。
それでは、そんな中どうするかというと、
・入居者に快適と安心が生まれる心豊かなデザイン
・オーナー様が建てたことに誇りが持てるデザイン
・街の人々にランドマークとして愛され続けるデザイン